このドキュメンタリーは、一部上場企業の7割を顧客にもつみずほコーポレート銀行国際為替部、ニューヨークのヘッジファンドで「通貨の魔術師」とも呼ばれているヘッジファンド、そして中国の通貨管理局から転身した香港のヘッジファンドの三者を同時に取材することで、視聴者に大変わかりやすい形でしかもダイナミックに通貨取引の攻防を伝えています。
http://www.nhk.or.jp/special/schedule.html
ドキュメンタリーを通して、いかに外国為替相場が、実態経済からかけ離れた形で動いているかがわかります。モノやサービスの取引(貿易)の状況やその背景としてある各国の経済状況よりも、むしろ変動差益を狙って巨額の資金を動かす投機家同士の駆け引き−それは時に「風説の流布」というだまし合いの様相を呈します−によって通貨の価値が大きく変動しているのです。
ところで、ここ最近の日本国内の問題に目を向ければ、「風説の流布」によって株価を操作しようとしたホリエモンをはじめとするライブドア幹部が証券取引法違反の容疑で逮捕されました。加えて、経済に通じていると言われる論客からは、ライブドアの株価高騰を支えた「企業価値がわからず高値をつける」個人投資家を批判するようなコメントも出されました。
しかし、よくよく考えてみれば、こうしたライブドア問題で問題視されたことは、外国為替市場ではまかり通っているのです。金融の専門家と呼ばれる人々が、自分の利益を目的に実際の価値とはかけ離れた価格で通貨を売買したり、出所のわからないような形でウソの情報を流し自分の狙い通りの価格に通貨を変動させようとしたりしているのです。
では、なぜこのような違いが出てしまうのでしょうか。その理由として、国内の証券取引市場と国際金融市場を比較した場合、前者には証券取引法という国家による規制が存在しルールに違反すれば検察や証券取引等監視委員会が動き違法行為を検挙するのに対し、後者には何の規制も存在しないということに注目すべきではないでしょうか。
そして規制がないがゆえに、ごく少数の国際金融市場のプレーヤーが、そこに参加できない多くの庶民の生活を犠牲にする形で利益を上げていることも忘れてはなりません。
今回のNHKのドキュメンタリーでは触れられてはいませんでしたが、投機家たちの思惑で異常なまでに為替相場が変動することによって、90年代にアジア・中南米では通貨危機で一国の経済が破綻し、投機家たちの「賭け事」とは本来無関係のはずの多くの庶民が失業と貧困に追い込まれるという事態が発生しました。このようなことが起これば、常識的には社会に対して巨大な損害を与えたヘッジファンドやメガバンクは罰せられる対象になるべきはずなのですが、実際には罰せられるどころか莫大な利益を確保しているのです。
このブログでは、こういった観点からグローバリゼーションの問題に踏み込んで行きたいと思います。
最後に、NHKのドキュメンタリーに話を戻しますと、ドキュメンタリーでは、みずほコーポレート銀行が日本企業の利益を守るために奮闘しているような感じに描かれていますが、みずほ銀行自体が、マネーゲームにおける一プレーヤーであることはふまえておくべきでしょう。みずほ銀行は「為替差益が期待できます」と外貨預金などの金融商品を勧めている側でもあり、そして銀行間の国際競争において、通貨取引で巨額の利益をあげている英米系のメガバンクを後追いする立場であるもあるのです。
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